【塾講師対象】適切な言葉遣いとタイミングについて

  • 2,882views
  • 2014年08月24日公開
キーワード
コミュニケーション
生徒
矢萩邦彦

昨年、名古屋市立中学2年の男子生徒がマンションから転落死、自宅からは「複数の人から『死ね』と言われた」と書かれたノートが見つかり、クラスの生徒からは「自殺する」と言った男子生徒に対し、担任の女性教諭が「そんなのやれる勇気ないのに、やってみろ」と煽るようなことを言った、という証言が報じられました。担任教諭は記者会見で「煽るようなことは決して言っていない」と否定しました。

真偽の程は分かりませんが、実際教育の現場で似たやり取りを見ることはよくあります。教師とのやり取りがトラウマになってしまったり、突発的な行動の引き金になってしまうこともあると思います。発言をする際に自分の意図と伝わり方は必ずしも一致しないのは当然なはずですが、どうしても一方的な価値観に立脚してしまいがちです。そして、極端な表現ほど、伝わらなかったときのズレは大きくなりってしまいます。大きなズレを生じさせないことはもちろんのこと、出来るだけ小さなズレも認識するために、言葉づかいとタイミングについて考えてみたいと思います。

同じ言葉でも、伝わり方は全く違う

以前勤めていた学習塾で、ある専任講師が授業中生徒に向かって「死ね」と言ったことが原因で、保護者の方から苦情の連絡があり、その生徒が退塾になるという事件がありました。当該講師は授業担当を外されることになりましたが、「確かに言ったが、ギャグとして言っただけだ。」「他の先生も生徒に死ねと言っていた。自分だけ非難されるのはおかしい。」と最後まで主張していました。問題はどこにあるのでしょうか。

ややこしいことに、その塾では生徒とは「タメ口」を心がけて、フレンドリーに接することという方針がありました。もちろん「親しき仲にも礼儀あり」のはずですが、明確なマニュアルがあるわけではなく、講師の「良識」に任されていたので、当然のことながらその対応には個人差が生じます。僕はその講師に「同じ言葉でも、誰が言うか、またタイミングによって伝わり方が違うのだから細心の注意を払うべき。」と話しましたが、結局納得してもらうことはできませんでした。

僕自身、馴染みのクラスでは授業中に言葉が乱暴になることもあるのですが、一番大事なのはやはり人間関係で、かつ言葉の指し示す内容が、その場において誰もが納得するものであるか、が重要だと感じています。メンバーそれぞれとお互いの性格や価値観を伝えるやり取りを重ね、注意や指示をする際もお互いの同意を元に進めていくように心がけています。

生徒が嫌う先生の特徴の一つに「なんで怒るのかが分からないところで怒る」というものがあります。つまり怒りのポイントが伝わっていないんですね。理由が分からないまま怒られることほど生徒達にとって不条理感や不信感を抱かせる一番のポイントになっているようです。

生徒をリスペクトできているか

以前、高円宮妃殿下にお目にかかった際に教育についてインタビューさせて戴きました。「今の教育に最も必要かつ足りないもの」という質問に対し妃殿下は「リスペクト」と答えられました。

お互いにリスペクトが出来ていれば、起こらないはずの問題は確かに数多あります。いわゆるモンスターペアレンツの問題なども、まずは教師側が保護者の方をリスペクトし、理解をしようと努力することで解消できるものもあると思います。実際教育の現場では「あの親はモンペアだから」なんていう会話を聞くことがあります。それじゃあいつまで経っても良い方向には進まない気がします。

生徒との信頼関係もしかりで、「先生のことを馬鹿にしている生徒が多い」という教師は多いですが、まず教師の側から生徒をリスペクトする感覚はとても重要だと思います。「子供は子供として完成しているのであって、大人の模型ではない」というのは寺山修司の言葉ですが、まさに未完成な大人として生徒に接してしまうと、目線が不自然に高くなってしまうような気がします。理由が伝わらないような怒り方をすることも、この辺りに原因があるような気がします。

特に家族以外の大人と接する機会が減っている都市部の小中学生にとって、学校の教師や塾・予備校講師の存在は時に大きいものだと思います。そういうことを自覚しつつ、こちらが謙虚になり、文字通り伝わらないことを前提に言葉を慎重に選び、また伝わったかどうか常に空気を読もうとするくらいの気持ちが必要なのではないでしょうか。
新規会員登録

コメント

Banners_image Banners_image
塾講師ステーション情報局について
塾講師の求人を探す
Banners_image Banners_image

画面上部に戻る