この連載では、中学受験・高校受験の地理分野で、単元毎に注意すべきポイント、良くある質問について解説していきたいと思います。まずは日本列島の位置についてです。
東西南北端と北方領土
まず、日本の端にある島々です。特に重要な沖ノ鳥島と南鳥島は無人島で東京都に属しています。なぜ無人島なのに重要なのか? なぜ東京都に属しているのか? それらの理由の中心となる「排他的経済水域」について生徒が自分の言葉で説明出来るようにしたいところです。
「排他的経済水域」は水産・鉱物資源と自然エネルギーに対する独占的な権利で、海上、海中、海底すべてに及びます。ちなみに、200海里は370.4km、1海里=1,852mです。
最北端……択捉島(北海道)
最東端……南鳥島(東京都)
最西端……与那国島(沖縄県)
最南端……沖ノ鳥島(東京都)
沖ノ鳥島は「島なのか岩なのか」という議論があります。国連海洋法条約では、高潮時においても水面上にあれば島としていますが、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と定められているため、中国と韓国が意義を唱えています。そこで、国土交通省は2016年完成を目指し、特定離島港湾の建設を進めています。
また、北方領土の一つ「歯舞群島(はぼまいぐんとう)」は、2008年までは「歯舞諸島(はぼまいしょとう)」と呼ばれることが多かったのですが、国土地理院と海上保安庁によって歯舞群島へ統一されました。「はばまい」と読んでいる講師も見かけますので、合わせて注意が必要です。
海と海流、リアス海岸
日本列島は四つの海(太平洋・日本海・オホーツク海・東シナ海)と四つの海流(千島海流・日本海流・対馬海流・リマン海流)に囲まれ、海流と季節風が気候に影響与えている、と教えがちですが、リマン海流は日本列島から離れていて、日本の気候にほとんど影響を及ぼしていません。日本海側に雪が多いのは冬の北西の季節風が、暖流である対馬海流にぶつかるからです。ちなみに、リマン海流は対馬海流が冷やされて南下して来たものであると言われていて、朝鮮半島の気候に影響を与えています。
これも頻出用語ですが、ギザギザに入り組んだ海岸を「リアス海岸」といいます。かつては「リアス式海岸」という呼称が一般的でしたが、教科書では「リアス海岸」と表記されるようになりました。どちらでも間違いではないですが、一応把握しておきたいところです。
緯度と経度
緯度と経度は、社会が得意な生徒でも引っかかる単元です。算数が苦手だと特に後ろ向きになりがちですが、それほど難解な計算はありませんので、しっかり理解させたいところです。
緯度と経度は、時計が60分で1時間なのと同じで、60分で1度になります。これを知らないと「約何度ですか」という問題に引っかかってしまいます。例えば、択捉島は北緯45度33分ですが、四捨五入ではなく、29捨30入になりますから、約46度になります。
また、「経度15度で時差が1時間」と暗記させるよりも、地球は1日(24時間)で一回転自転をするのだから、「360度÷24時間=15度」と計算で導けるように解説することで、応用力がつきます。覚えざるを得ない知識以外は、しっかり理屈を説明することで、社会科が暗記教科だという先入観をなくすことが、苦手を克服させる第一歩になります。