ロックが考えたこと【倫理の偉人たち】

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  • 2015年04月25日公開
キーワード
倫理
哲学
西洋
ロック
近代
経験論
認識論

倫理を学ぶ意義とは

倫理という科目は実にマイナーで、積極的に学ばれる科目ではありません。

出題するところはセンター試験と一部の私立だけですし、比重もそんなに高くない。

正直な話、倫理の単語集を見て、その字面をなんとなく覚えるだけでセンターの得点は80点を超えたりすることもあります。

 

そんな倫理ではありますが、塾講師という立場にたてば、倫理を教えなければならない場面があります。

それは、生徒が倫理を教えて欲しいと言ってきたとき、あるいは倫理に関する質問をしたときです。

 

しかし、倫理を学ぶ意義は、入試に合格するためだけではありません。

倫理に登場してくる哲学者や思想家は、思考のベースを提供してくれる偉人たちであり、その考えを理解するだけで数学や国語に応用できることも少なくはないのです。

何より、日常生活を豊かにしてくれます

今、あなたの目の前にあるパソコンあるいは携帯電話が今後社会にどんな影響をもたらすのか、それを考えさせるものでもあるのです。

倫理(あるいは哲学)を知ってほしいという思いでこの記事を書きました。この記事は、倫理によく登場してくる偉人たちを取り上げ、彼らがどのような思想を持っていたのかをより深く理解するために書かれています。

 

ロックという人

ロックといえば、社会契約論を立ち上げた人。

そう思う方が大多数でしょう。

しかし、ロックの本当のすごさは、「イギリス経験論」の父と呼ばれているところです。

では経験論とはなにか?

この記事では政治で語られるロックではなく、経験論の父としてのロックを見ていきたいと思います。 


まず経験論って何?

おそらく、最初に思いつくワードが帰納法ではないでしょうか。

確かに、帰納法は経験論と大きく関連するのではありますが、本当に重要なところはそれではありません。

 

経験論を理解するには、2つの問いについて深く考える必要があります。

①知るとはなにか?

②実在とはなにか?

ロックはこれら2つの論点について、経験をキーワードに画期的な回答をもたらしたのでした。

 

知るとはなにか?

「知る」とはどういうことでしょうか。

私たちは神の存在を見たことがありませんが、観念としては一応知ってはいます。

私たちは愛だとか平和だとか、そういった目に見えない観念も、目には見えないのですが、一応知ってはいます。

 

なぜ?

 

誰も見たことがないし、存在として認知したこともない。

なのに私たちは愛や平和を「知っている」として、そしてそれについて語りもします。

実はこれについてはプラトンを始めとした哲学者はすでに回答を出していました。

「もともと人類が共通して、生まれながらに持っていた観念なんでしょう」

これを生得説といいます。生まれたときからその観念を知っているというのです。

 

しかし、ロックはこれに対してこう反論します。

 

「でも犯罪者のなかには人を殺していいと思っている人もいたりするし、子供がもつ観念が大人の観念とは異なったりすることもある


ここで、ロックは観念だとか道徳だとかは、人間が本来持っているものではなく、生活の経験の中で得られるものだと主張しました。

人間の心はもともとは白紙(タブラ・ラサ)のようなものであるというのです。

 

何かを体験して観念を生み出すことを感覚と呼び、何かを考えて観念を生み出すことを反省と名づけました。

 

前者は気温40度の空間に入ることで「暑い」と感じるようなもの。この「暑い」という観念を生み出す行為を感覚と呼びます。

後者は、なぜだろうと考え、それに対して答えを出す行為のことを指します。例えば「母親に優しくされると嬉しいのはなぜか」と考え、そこから「愛がある」という答えを生み出すことです。

このように、1つの感覚から1つの観念を、1つの反省から1つの観念を生み出していますが、これらの観念は単純観念と呼ばれています。

そして複数の感覚または反省から1つの観念を生み出すことを、複合観念と呼ぶのです。複合観念については実在の話の中で後述します。


けれどもこれにはひとつ欠点があります。

「なんで人類みな似たような観念を持つのか?」

カントはこのツッコミをしたのでした。経験論は哲学の系譜としてはカントに吸収されてしまいましたが、世界の見方としては大きな知見をもたらしたのは事実です。

 

実在とはなにか?

さきほどはおおまかに観念の話を中心に取り上げてきましたが、今度は物理的な物の存在について考えていきたいと思います。

ここで話すことはロックの主張とは少し異なるのですが、経験論を理解するためには重要なことなので、少し正確さを欠いた説明をすることをご了承ください。

 

例えばあなたの目に、赤い球体が見えるとします。

感覚では距離はほんの50cmほど。

視覚情報に基づけば、その赤い球体は「実在する」といえるかもしれません。

しかしあなたが手を伸ばし、赤い球体に触れようとしたら触れることができません。

では、このとき、赤い球体は「実在する」といえるのでしょうか?


蜃気楼はどうでしょうか。蜃気楼によって見える景色は、視覚情報としては正しいものですが、錯覚として間違った存在として扱われます。

赤い球体も、蜃気楼も、どちらも「実在する」とは断言できないのです。

 

ところで、私たちは赤い球体についての視覚情報を得ています。

つまり、それは、ある種の単純観念なのです。そこに物自体が存在し、そこから発せられる赤い光を受容しています。

しかし、私たちはそれだけではそこに「何かが実在する」とはいえないのです。

なぜなら、私たちが受容しているのは赤い光のみであって、物自体ではないのですから。

 

 

少し現実の話に戻しましょう。

あなたの目の前にある携帯電話。もしかしたらそれは、実在しないものかもしれません。

あくまで携帯電話の形の視覚情報を受容しているだけかもしれないのですから。

けれども、あなたがそれに手を伸ばし、触覚で認知し、あるいはバイブ音を聴覚で認知して、複数の感覚を持って、携帯電話という実在を認めることができます。

このように、複数の感覚、複数の反省をもって生み出される観念を複合観念と呼びます。

 

つまり、ロックは全ての物理的な実在は、複数の感覚でもってして認知されるのだから、それは複合観念だと主張するのです。

そして、逆にいえば、実在するものとはすなわち、複数の感覚で認知されたものであるというのです。

 

コラム:合理論と経験論の対比

よく合理論と経験論が対比されるので、一つの命題を、合理論と経験論がどのように理論立てるのかを考えていきたいと思います。

 

命題:「愛」とはなにか?

愛を考えるためには、まずはそれがどのようにして生まれるのかを考えた方がいいでしょう。

すると、その性質が見えてきそうです。しかし、愛がどのように生まれるのかについては、合理論と経験論ではアプローチが全く異なるのです。

合理論派「まずはこの世界に、モナドというものがあると仮定しよう。モナドとはあらゆるものを構成する小さな単位のことだ。それらが結びつくと、きっと「愛」という概念が生まれるのではないのか?」

合理論の特徴は、まずは仮定を設定するところにあります。今回はライプニッツの仮定、「世界はモナドで構成されている」というものを持ちだしました。

経験論派「合理論派はなっておらん。まずは私たちが”認識”できるものからスタートするべきだ。つまり、目に入ってくる視覚情報、耳に入ってくる聴覚情報、そこから何かが生まれるはずだ。愛に関連するような事態、例えば、家族に優しくしてもらうとか、好きな人に抱いてもらうとか、それらを経験しつつ、そこに共通して感じる感情を共通項としてくくり、”愛”を生み出しているのではないのか。

経験論の経験とはすなわち、”認識”なのです。合理論のように仮定を作るのではなく、まずは私たちが認識しているところからスタートします。

合理論は演繹法中心、経験論は帰納法中心と呼ばれるのは、証明方法の弱点がすごく似ているからですね。

合理論は仮定が間違っていれば、全てが崩壊します。

ゆえに、デカルトにしろ、スピノザにしろ、ライプニッツにしろ、仮定が曖昧だと反論を受けることが多いのです。一方で、経験論は、経験をベースに理論を組み立てるので、反例を1つ見つけてしまうとその証明が崩れてしまうという弱点があります。

 

経験論の意義

経験論は、認識論として、「我々はこの世界をどのようにして認識するのか」という問いについて深く考えていきます。時には目の前にある物体さえも、存在を疑うのです。

突拍子もない話だと思いますか?でもこの話は、現代の映画や小説、あるいはゲームに大きな影響を与えているのです。

一番の例は「MATRIX」という映画です。この映画では、「私たちが今まで体験してきた世界は、全て機械によって見せられた夢である」というとんでもない世界観に立脚しています。バーチャル世界という考え方も、経験論から派生したものといえるでしょう。

私たちが認知することと実在の間には隔たりがある。

私たちが「知っている」と思っているものは嘘かもしれない。

世界に対する見方に最も大きな影響を与えた思想こそが、経験論といっても過言ではないでしょう。

 

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