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【塾講師必読】一から十まで教えるな!【一から十まで病?】

2021/12/17

一から十まで病

教師として教える立場に立つ以上、教え方は丁寧であるに越したことはありません。


しかし、その丁寧という言葉の認識を額面通りにしか持たない人がいるのも確かなことです。

「丁寧に教える」ことと「一から十まで教える」ことは違います。


確かに、丁寧に教えるべきではありますが、

一から十まで教えるのは、実は基本的に取りたくない教え方なのです!


本稿では先生方に気を付けて欲しい「一から十まで病」とでも言うべき厄介な問題について、

その内容と対策を記述するものになります。

 

 

「一から十まで」と聞いてドキッとした方は、一度読んでみてください。

 

 

 

 

「一から十まで」~と聞いて思い浮かぶのは、

「じっくりと」「基礎から」「懇切丁寧な」といったキーワードではないでしょうか。


ですので、

先述の「一から十まで病」は、

じっくりと」「基礎から」「懇切丁寧な」教え方にどっぷりと浸かってしまった状態のことを言っています。

 

基礎からじっくりと教えてくれるなんて、良いことじゃないのか! 

と思われる方も少なくはないでしょう。

 

 

ですので、まずは何が問題なのかをお話します。

 

何が問題?

極端すぎる例を出します。


方程式を学習するシーンを想像してください。

1次方程式です。その時に先生がこんなことを言い出したらどうでしょう。


 

「方程式っていうのは数式を解いていくことでこのxが何かを求める問題だ。つまりその基礎は数式! 今から四則演算のルールを確認していくぞー!」

 

もちろん、非常に極端な例です。

とりあえずこれで分かって欲しいのは、「基礎から」やれば良いってものじゃないぞ、ということです。

 

 

とはいえあまりにも現実味が無さ過ぎますので、もう少し身近に寄せていきましょう。

 

 

 

 

次は、ミニテストか何かを返したときを想像してみましょう。

 

生徒は残念ながらある問題を間違えてしまっています。

そんな時に、先生としては当然解説をする必要が感じられるはずです。

 

「この方程式は、ここで移項する時の符号が間違えてしまっているね。移項する時には符号が変わるのを忘れないようにね!」

 

とでも言ったとしましょう。

これなら先程の極論よりずっと身近ですし、

今も「え、これくらい普通に言うだろ、というか言わなきゃ駄目じゃない?」と思っている方もいるかもしれません。

 

もちろん、そうだと思います。

移項のルールは大切ですから、今後も間違えてしまうのは防がなくてはなりません。

ですが、そのように教える前に、まずしなくてはいけないことがあるのです。

 

 

 

 

 

「これ、どこが間違いだったか分かる?」

 

 

 

 

 

何が言いたいのか、もうお分かりのことでしょう。

 

 

計算にせよ文法にせよ暗記にせよ、何も知らない状態の生徒にいきなり「この問題を解きなさい」は不可能です。し

かし、1度学んだ内容に関係するものであるならば、理想を言えば「分かるはず」なのです。

それならばまずは自分が出した答えが間違いであることを認識したうえで、

生徒に考える機会を用意することが必要です。

 

 

その上で、先程の様にしっかりと解説をしましょう。

教えてもらうよりも、自力で解く方が嬉しいですし、身に付きます。

 

 

 

 

「最初に教えるとき」

 ……と、ここまでの話だと「じゃあ、最初は(初めてやる単元では)結局『一から十まで』教えるのか」と思われるかもしれません。

その通りではありますが、その「最初」はおそらく想像されているものとは異なるものになります。


 

それを確認するために、今度は英語の単元で考えてみましょう。

 

例えば、過去進行形という単元を見てみましょう。

 

過去進行形は中学2年次に学習する範囲です。

当然、中学2年生の生徒達はこの単元に入ったときに初めて、この過去進行形という文章や文法に出会うことになります。

 

しかし、それは先述の「最初」の学習だとは必ずしも言えないのです。

 

過去進行形の文法は、すでに学習したbe動詞の過去形や現在進行形等の知識を複合したものになっています。

 

 

すなわち、『be動詞の文法』、『be動詞の過去形』、そして『現在進行形』がマスターされていれば、

過去進行形において『初めてやること』など無いと言ってしまっても過言ではないことがお分かり頂けると思います。

 

 

過去進行形の文法は『be動詞の過去形 + 現在分詞 + (過去の時制を表す語)』と表記し、

「知っているものに近いものはありませんか?」と聞いたり、

肯定文だけを例文として紹介した後に否定文や疑問文を考えさせたりということが出来るはずです。

 

 

この様に考えれば、『新しい単元である』過去進行形だからと言って、

 

その都度文法などの『一から』、

それらの変化した形や注意事項を網羅する『十まで


説明する必要が無いのは、十分お分かり頂けるでしょう。

 

ほとんどの先生方は意識せずともこの教え方を出来ているのではないでしょうか。

しかし、つい生徒に考える時間を与えることによる「時間」を短縮したいなどの思いから、しなくていいところまで説明してしまうこともあるでしょう。

 

意識して、この方法を実行することをお勧めします。

 

それによるメリットは?

もちろん、その様な教え方を勧めている以上、私自身が教えていてこの方法にメリットを感じていることは言うまでもありません。


いくつかのその利点を紹介します。

 

①生徒の理解度の向上

 

これは塾などの場以外で得ることが難しい要素の1つですが、

『自力で答えないといけない』というシチュエーションは非常に良いきっかけになります。

普段であれば「分からないから先生の解説を待っていよう」などとついつい自分で調べる、考える、という行為を怠ってしまう生徒が多いですが、

塾などの場で「これはどういうことだと思う?」と聞かれて「考えたくありません」という生徒はなかなかいないでしょう。

 

であれば、聞かれて分からないと思ったとしてもそこから「えーっと、」と考えることになります。

先の過去進行形の例であれば「ingだから現在進行形と変わらない?」などということにまで考えが及ぶかもしれません。

 

 

 

単純に答えを教える場合でも自分で考えた結果分からなかったから教えて貰うのと、

最初から答えを教えて貰うのとでは理解度に雲泥の差が出ます。

その「考えた結果」を効率良く生み出すために、

過去の学習と繋げて自ら発想させようとすることが有効なものになります。

 

 

 

②復習に繋がる

言わずもがなですが、全く新しいことを学ぶときに過去の学習を引き合いに出すことは出来ません。

つまり、先述の様な「自分で考えることが出来る」問題について考えることは、

「自分が今までに学んできたことの復習」になっています。


そのまま例を流用しましょう。

過去進行形を学習することで、

be動詞・現在進行形・be動詞の過去形についての復習をすることにも繋がるのです。


生徒が「分からない!」と言ったときや、その範囲の内容を1度まとめるときなどには、

さらっとでも関連する学習済みの範囲を参照してあげると良いでしょう。

 

その学習内容が1つの独立したものではなく、これまでの学習と地続きのものであることを認識できるはずです。


もちろん、最初からそれらまで教えてはいけませんよ。


 

 

③長期的な視点で見た際の時間の短縮

どうしても、その都度生徒が考えなくてはいけなくなりますので時間がかかるようになります。

しかし、それはあくまで内容がしっかりと身についていくための先行投資です。

身についてしまえばすなわち、それ以降おこなう新しい単元についての基礎知識を持っていることになりますから、年単位の長いスパンで見れば、時間の短縮に繋がっていくはずです。

 

④生徒のつまづきを見つけやすくなることです。

2次関数まで進んだ所で振り返ってみたら、まだ生徒が方程式と関数の違いについて全然理解していなかった、なんてことは決してありえないことではありません。

中学校・高校くらいの勉強ではどうしても、その単元ごとに勉強が区切られてしまいますから、

それらを意図して繋げていかないことには、独立したものとして認識されてしまうこともあり得るのです。

しかし、新単元ごとに生徒が自分の理解度を見直す機会を設けられれば、生徒がどこまで理解していてどこから理解していないのかを見つけ出す絶好の機会が何度も訪れることになります。

1度のテストでは偶然「苦手」として認識されなかったものを再度見つけ出すことができるでしょう。

 

 

 

⑤生徒のプライドをくすぐることが出来る

「まあ、難しい単元だし、しょうがないよね」と新しい単元に対して諦められてしまうのは、

教師としては何としても避けたい事態です。

 

諦観されてしまうと意欲が失われますし、当然それ以降の勉強にも諦められた単元が基礎として散りばめられていくことになりますから、それもままならなくなるでしょう。

そこで、

「難しく見えるけど」「新しいことに見えるけど」

 

『実は、今までにやってきて出来る内容の組合せでしかないんだぞ』と言うことで、

 

「何か難しいけど、出来るはず」と思ってもらうことが出来ます。

 

事実、私の担当している生徒は、初めに解けなかった連立方程式の解き方をしっかりと文字式の計算と一次方程式とに関連付けて教え直したときに「それなら出来る気がする」と諦めかけていた手を動かしはじめてくれました。

 

 

すぐには出来るようになりませんでしたが、答えを間違えると「あーくそ! 惜しいのになぁ!」と悔しがるのです。

出来ないことを悔しがり始めたら勉強はあっという間ですね。

 

『自分には十分できるレベルの問題だ』『なのに出来ない』というのを上手くコントロールして、

生徒のモチベーションを引き上げることもできるようになります。

 

 

 まとめ

 

結局どこを教えてどこを教えないのか、というのが分かり辛いかもしれませんのでまとめに入りましょう。

 

小難しいことを言っているように見えたかもしれませんが、

皆さんも当たり前の様にやっていることの延長でしかありません。

 

英文を見せた時にいちいちその単語を1つ1つ解説しませんよね。

2次方程式を学んでいる最中に指数について説明はしませんよね。

 

 このように、

『今までの学習をしっかりと理解できていたら知っているはずのこと』

『今までの学習範囲から推測できること』

を説明から省くのです。

 

 

 

これらを新しい単元に入るごとにすぐに説明してしまわず、

まずは生徒達が自分で考えるという段階を作ること。

 

これによって、(自力では分からなかったとしても)説明を聞いた時の理解度が大きく向上します。

少し授業時間を使ってしまう為、細かい単元で1つ1つこなしていくことは難しいと思いますが、

大きな単元の切り替わりのタイミングなどで取り入れてみましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

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