ICT導入で講師不足が解消される?~ICT教育が講師に与える効果は負担の軽減と○○の向上~
現在、塾業界が抱える問題は様々です。特に厳しい状況にあるのがアルバイト講師の獲得です。なぜアルバイト講師の獲得が難しくなっているのでしょうか。
学生が塾講師に対して抱いているイメージとは
アルバイト講師のメインとなる学生が、アルバイトを始めるうえで大事にしているのは、給料・立地の他には仕事のやりがいや楽しさです。そこで塾講師を“やりがい”と“負担”の関係で見てみると次のようになります。
塾講師はやりがいはありますが、学生から見ると負担のほうが少し大きいため、天秤が少し傾いている状態です。負担が大きいというイメージに加えて、最近では塾講師=ブラックバイトという悪い評判も求職者に広がってしまっています。そのため、学生は塾講師に対して実状以上に負担が大きいというイメージを強く持っており、天秤は負担の側へより傾いている状態です。
塾講師が本当にブラックバイトなのかについては、情報局内の「【現役塾講師が語る】徹底検証!塾講師バイトは本当にブラックなのか?」でも書かれていますが、私自身も塾講師はブラックバイトではないと考えています。ほとんどの塾は健全な経営を行っており、塾講師として働くことで得られるものは非常に大きく良い面もたくさんあります。しかし、世間に広がっているイメージは実際よりもマイナスイメージ強く、そのイメージの改善は容易なことではありません。
主に弊社が運営している学生向けメールマガジンt-news会員を対象としたアルバイトの探し方に関する調査では、ほとんどの学生は求人内容よりも友人や先輩の声をより重視していることが分かりました。学生がアルバイトを探す際に重きを置いているのは、実際に働いている人の声のようです。塾講師として働く人が“塾講師は皆が思っている程負担の大きなアルバイトではないよ”と、友人や後輩に伝えてくれる状況を作り出すには、講師の負担を物理的に軽減し、大幅にイメージを改善することが必要であると考えられます。
しかし、そうはいうものの、簡単にできるものではないと思います。では、どうすれば講師の負担を軽減できるか。次にその具体的な方法を紹介します。
ICT教育が講師の負担を軽減する?
ICTとは?
講師の負担を軽減する効果的な方法として、ICTを活用したICT教育を推奨します。
情報技術を意味するITに代わってICTという言葉が日本でも広まりつつありますが、ICTというのは、情報通信技術を意味する言葉です。文部科学省は、子供たち1人1人の「生きる力」を確実に育成するため、「情報活用能力」の育成、ICTの活用による協働型、双方向型の授業革新、校務の情報化による教員の負担の軽減などを推進しています。(文部科学省 教育の情報化ページより引用 http://jouhouka.mext.go.jp)
実施例
例えば、実際にどのようなことが行われているのかというと、中学理科の宇宙分野の授業でICTを活用した事例があります。地球と太陽の位置関係を学ぶには物事を立体的に想像する力が求められますが、それが苦手な子供もたくさんいます。そこでタブレットを利用し、実際に目で地球と太陽の動きを立体的に確認することができるアプリケーションを活用することで、そのような子供たちの理解を手助けすることができるのです。
このようにICT教育は様々な面に効果を発揮しますが、今回は講師に与える影響に絞って書いていこうと思います。
ICTが塾講師に与える効果
ICT教育が講師に与える影響はずばり、達成感の向上、負担の軽減です。実際に佐賀県武雄市の小学校とその効果等の検証を行っている東洋大学の発表ではICTを活用した授業後の教員へのアンケートで、達成感が向上したうえ多忙感が減ったと答えた教員が非常に多かったという結果が出ています。
全国私塾センターより引用 http://www.shijyukukai.jp/2015/10/8599
このような結果となったのは、ICTを活用した授業を行うことで、生徒の反応が大きく変わり、授業に対して積極的に取り組むようになったため、より楽しくより良い授業を実施出来たという感触が教員に残ったためです。また、授業の一部をデジタル教材や動画コンテンツで行うことにより、その分の準備時間が削減され、教員の負担が減ったことも講師の多忙感が減った要因の1つと考えられます。
ICTが講師にもたらす良い影響
時間的余裕が出来る
授業の達成感が増し、精神的にも充実する
ICTを活用した新たな学習スタイル
他にも、ICTを活用した学習スタイルとして今脚光を浴びているのは「反転学習」というものです。
ご存知の方も多いかと思いますが、反転学習というのは、授業を“宿題”として家庭で受け、教室では問題演習や議論を中心とした授業を行うというものです。まさに言葉の通り、教室で授業を受け家庭で宿題として問題を解くスタイルを反転させたものです。この反転学習を行うことで、教師は生徒一人一人に対してよりきめ細かい指導を行うことが可能となり、また、授業を行う必要がないため、授業の準備時間が少なくなることも大きな利点です。
このように、反転学習を始めとしたICTを活用した教育にはメリットがたくさんあります。
ICT教育の課題
良いこと尽くめのICT教育ですが、もちろん課題もあります。
一つはICTを活用できる講師の育成が必要なことです。ICT教育を行う上で講師にはICTについて理解を深め、適切な指導を行うことが求められます。なぜなら、講師のICTに対する理解が無ければ、上に挙げたような効果は期待できないからです。ICTを活用できる講師の育成のためには、塾独自で研修を行うか、ICT活用研修を行っている民間団体があるので、それらの研修やセミナーに参加すると良いのではないかと思います。
次の課題として、家庭・塾の負担が大きくなることが考えられます。なぜなら、タブレット教材やネット環境が必要であるため、費用面で家庭や塾に負担がかかるからです。さらに、反転学習を実施する場合には保護者の協力が必要不可欠となります。というのも、自宅で授業を受けてもらうためには保護者に子供の学習をしっかり管理してもらわなければならず、管理がずさんになってしまうと、授業を受けない子供が出てくることも考えられ、逆効果になりかねないからです。実際に反転学習を行った学校によるアンケートでも、保護者から「最初は目新しいものへの興味で楽しく学習を行えているが、慣れてきたらどうなるのかが心配だ」という声も多く聞かれたそうです。
また、ICT教育は生徒のモチベーションをいかに維持できるかが大きな課題です。保護者の協力に加え、いかに面白く生徒が勉強を楽しいと感じるような動画コンテンツ、デジタル教材を作ることが出来るかが大きな焦点となるでしょう。現在出版社などがアプリ教材などの作成に取り掛かっているため、それらの中からそれぞれの塾に合ったデジタル教材を見つけることも必要となってきます。
ICT教育の課題
ICTを活用できる講師の育成
家庭への負担
生徒のモチベーション維持
まとめ
今アルバイト講師の獲得は非常に困難で多くの学習塾の採用担当者の方は苦労されていることと思います。アルバイト講師の獲得が困難であるのは、講師の負担が大きくそのことがブラックバイトというイメージを生み出し、そのイメージが広く世間に知れ渡っていることが大きな原因です。ICT教育は講師に時間的・精神的余裕をもたらすことで、講師の負担を軽減し、ブラックバイトというイメージも払拭することが出来ます。イメージが改善されれば、塾講師というアルバイトが学生にとってより魅力的なものとなるでしょう。しかし、課題も多く残っているため、それらの課題をしっかり認識しながら、従来の学習スタイルに上手く活用していくことが必要です。今回は講師に与える影響に絞ってお話しましたが、生徒にとってもたくさんのメリットがあります。それについてはまた別の記事でお話ししようと考えていますが、今働いてくれている講師のためにも、今後の新しい学習スタイルとして、ICT教育を取り入れてみてはいかがでしょうか?