力と圧力【物理】
力といえば、弾性力(バネ)、張力(ヒモ)、摩擦力、重力、磁力などが挙げられますが、
実は圧倒的に出題傾向が強い力があります。
それは弾性力、つまり、ばねについての出題です。
高校物理では弾性力はバネの伸びの長さをx、バネ定数をkとすると kx と表せることを学びます。
しかし、中学理科では指導要領外です。
従って、バネの伸びの長さと弾性力の関係はグラフで示されることが度々入試問題で目にします。
そこで、グラフの読み取りに慣れさせなければいけません!
それではバネの問題を解いてみましょう。岡山県の高校入試の改題です。
先生としての目標解答時間は5分です。
【問題】
ばねに加えた力の大きさと、そのときのばねののびとの関係が右図のようなばねがある。
縦軸が力の大きさ[N]を表し、横軸がばねののび[cm]を表している。
地球上でこのばねにおもりをつるし、おもりが静止したときのばねののびを測定した。
おもりAだけをつるしたときのばねののびは12cm、
おもりBだけをつるしたときのばねののびは4cmであった。
月面上の重力の大きさは、地球上の6分の1、
ばねに力が加わっていない時の長さを10cmとして次の問いに答えなさい。
(1) 地球上で、おもりBにはたらく重力の大きさは何Nか。
(2) 月面上で、このばねにおもりAをつるすと、ばねののびは何cmになるか。
(3) 月面上で、このばねにおもりAをつるすと、ばねの長さは何cmになるか。
(4) 月面上で、上皿てんびんの左の皿の上におもりAを1個のせたとする。
この上皿てんびんをつりあわせるには、右の皿の上におもりBを何個のせればよいか。
…
…
…
解答・補足
(1) 0.4[N] (2) 2[cm] (3) 12[cm] (4) 3[個]
グラフの読み取り方としては(1)では4cmという縦軸の値から右に進み、
グラフとぶつかったところで下に進み、そこの値が力の大きさにあたります。
(1)では0.4[N]になります。
(2)ではまず12[cm]から1.2[N]が分かり、
月面上の重力の大きさは、地球上の6分の1なので0.2[N]となります。
あとは0.2[N]から上に進み、グラフとぶつかったところで左に進み、その値が2なので、答えは2[cm]となります。
また、バネに加えた力の大きさとバネに加えた力の大きさが比例しているので12÷6=2 [cm]としても問題ありません。
(3)では(2)で2[cm]と求められていますが、注意するところはばねの「長さ」なので、
ばねのもとの長さ+ばねの伸びが答えとなるので10+2 = 12[cm]となります
(4)では月面上で重力の大きさが地球上の6分の1ということにだまされないようにしましょう。
上皿てんびんは右の皿も左の皿も月面上にあるので、おもりAとBの重さの比(ばねを下に引っ張る力の比)は地球上と変わらず、3:1になります。
したがって、1個に対しては3[個]が答えとなります。
補足ですが、重さと質量には違いがあります。
重さ:物体に働く重力の大きさ 質量:地球上での物体そのものの量
例えば、地球上で重さ120gの物体は月面上では重さ20gになりますが、質量は120gです。
ここで1つ注意しておきます。
先生としての目標解答時間を毎回載せていますが、これは答えの確認を含めた時間です。
例えば、今回の問題では「月面上」なのか「地球上」なのか区別できておらず、間違えたということはありませんか?
先生が見落としてしまうミスは生徒にも必ず出ます!
ケアレスミスはもったいない!という言葉をよく聞きますが、先生が見落としていては本末転倒です。
先生としての自覚をもって常に全問正解する意識を持ちましょう。
先生のケアレスミスは生徒のケアレスミス!!!!
圧力
圧力に関する問題ではさきほどの力と混同しないことが問題を解くときの一番のポイントです。
圧力は単位がPa(パスカル)(=N/㎡ )であり、1立法メートルあたりに働く力です。
圧力(Pa) = 力(N) ÷ 面積(㎡)
したがって、圧力を求める時には力を面積で割ることに注意しなければいけません。
逆に、圧力から力を求める時には圧力に面積をかけることを注意しなければいけません。
また、100gの物体に加わる重力の大きさが1N(ニュートン)です。
単位の変換を忘れずに行いましょう。
このように忘れやすいポイントが多いので生徒が間違えるたびに何度も強調しておきましょう。
3年生では力を及ぼしあう運動を学習し、融合問題も入試では見られるので、
ここでしっかり理解させておきましょう。
それでは圧力に関する問題を解いてみましょう。
富山県の入試問題を基にした問題です。目標解答時間は6分です。
【問題】
質量が600gのおなじびんを2本用意し、図1、図2のように水平な台の上に置いた。
びんは底もふたも平らで台とふれあう面積は底が50㎠、ふたが20㎠であった。
また、ふたは軽くて質量は無視できるものであった。
これについて次の問いに答えなさい。
(1) 図1の①、②、③の矢印はそれぞれ、びんの重力、びんが台を押す力、台がびんを押す力を表している。作用反作用の関係にある2力はどれとどれか。
また、つりあっている2力はどれとどれか。
それぞれ、番号で答えよ。
(2) 図1で、台とびんがふれあう面にかかる圧力はいくらか。単位をつけて答えよ。
(3) 図2のようにびんをさかさまに置いた時、台とびんがふれあう面にかかる圧力は、図1のように置いた時と比べて何倍になるか。
…
…
…
解答・補足
(1) 作用反作用の関係にある2力・・・②と③ つりあっている2力・・・①と③
(2) 1200 [N/㎡] (1200[Pa]も可) (3)2.5倍
(2),(3)は圧力に関する問題ですが、(1)は力のつりあいに関する問題です。
作用反作用の関係なのか、つりあっている2力なのか。
間違えやすいポイントなので詳しく説明していきます。
(1)の説明
【作用反作用の関係】
作用反作用の関係とは「大きさが等しく向きが反対の2力」という意味です。
(これは先生が黒板を押して上げるととても分かりやすいポイントです!)
「先生が黒板を押す力」と「黒板が先生を押す力」は作用反作用の関係にあり、
両者は等しいので、先生は黒板を押しても静止したままです。
この2力は「主語と目的語を入れ替えた形になる」ということがポイントです。
つまり、今回の問題では、
①地球がびんを引く力
②びんが台を押す力
③台がびんを押す力
となるので、主語と目的語が入れ替わっている関係の②と③が答えとなります!
【力のつり合い】
力のつりあいとは「大きさが等しく、向きが反対で同一作用線上にある2力」という意味です。
作用反作用の関係に「同一作用線上」という言葉をつけただけですが、
ポイントは、
「1つの静止した物体に働く2力を選ぶ!」
ということです。
静止している物体に加わる合力は0です。
すなわち、2力はつりあっているのです。
このことから、びんに加わる2力が①と③であることから、①と③が答えとなります。
以降、カッコの部分は先生用の補足です。
生徒がどうしても納得できない場合、説明してあげましょう。
※②と③は「大きさが等しく、向きが反対で同一作用線上にある2力」という条件を満たしているのに、
なぜ力のつりあいに含まれないのか、という疑問をもつかもしれません。
実際、力のつりあいに含まれています。
ここでのポイントは、
力のつりあいに該当する2力のうち、作用者と被作用者がちょうど入れ替わった関係を満たす2力を特別に「作用反作用の関係のある2力」と呼ぶ
ということです。
また、「つり合い」という言葉の性質から「一つの物体に加わる合力が0」という意味で用いられることが多いというのも理由の一つです。
(1)の説明だけで長くなってしまいました。
(2)の説明
(2)ではまず、g(グラム)をN(ニュートン)に変換します。
100gに加わる重力を1Nとするので、びんに加わる力は6Nです。
また、面積は 50㎠ = 0.005㎡ なので、6 ÷ 0.005 = 1200[Pa] となります。
(3)の説明
(3)では最初のうちは50㎠を20㎠に置き換えて計算して説明しましょう。
面積の大きさに反比例するので、などと説明すると楽ですが、
まだ生徒は比例、反比例の関係になれていません。
実際、比例・反比例を数学で教えるのも1年の2学期です。
先生の立場から見れば楽かもしれませんが、数学が苦手な生徒に変に苦手意識を持たせないように、
公式の扱い方をしっかり確認する意味でも計算手順を1つ1つ確認させましょう。
光・音とは異なり、計算する場面が多い単元ですが、使う公式は少ないので計算練習を十分に積ませましょう。
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