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生物の世界観と視覚的イメージ

高校生

2021/12/17

暗記させずに理解してもらうには

こんにちは。

本記事では暗記科目と思われがちな理科、特に生物で、暗記が苦手な生徒にどのような指導をすればいいかを考えていきます。

生物を苦手としている生徒の中には、これを暗記科目と認識している生徒も多いようです。暗記科目として認識しているため暗記を頑張ればテストでも点が獲れると考えてしまって、暗記に頼った勉強法になってしまうんですね。

しかし、実際は暗記をしたとしても、それらが知識として定着していなければ落とし穴に落ちてしまいます。こういう経験はたくさんの生徒が抱えているでしょうし、講師の方々も過去に経験があるのではないでしょうか…。

 逆に暗記が得意でない生徒でも生物が得意な生徒もおります。この生徒たちは生物を暗記科目だとはとらえていないでしょう。生物に興味があり、教わった事はもちろん、自ら学習したことが確実に知識として定着しています。生物が本当に得意な生徒ほど実はそれほど暗記をしていないのです。

では、生物が苦手な生徒にたいしてまず行うべきは

暗記科目というイメージを取り除くということでしょう。

生物の世界に生徒を引きこむ

生物に限ったことではありませんが、暗記に偏った勉強をしている生徒は授業や教科書の内容を理解しているわけではありません。単に出てきたワードや模範解答を記憶している状態です。

生物という分野の世界観を掴んでいると、暗記をそれほどしていなくても理解することが出来ます。

生物を指導するにあたってはまず、世界観を掴ませてあげることを意識しましょう。

世界観を意識した指導にするためにはまず、導入部分を丁寧に作ることが重要です。

導入にはその単元の背景を

各単元に入っていくにあたって、いきなり教科書やテキストの説明を始めてしまうともう、そこからは生徒にとっては文字を追うだけになってしまう可能性が大です。

なので、その単元に入る導入の際にはその背景を話すことをおすすめします。

生物で最初に学習することといえば細胞の構造です。

動物細胞や植物細胞の違い、小器官の図が必ず教科書に出てきますね。

例えばこの単元ではどんな背景を導入に入れればよいでしょうか。

背景は教科書の行間にある

細胞の構造では細胞を発見した人物(動物細胞はシュワン、植物細胞はシュライデン)と顕微鏡の発明といった歴史が教科書でも説明されていますね。
これをそのまま紹介しても一応は背景にはなります。というのも、ここでいう背景はほぼ歴史だからです。なので教科書にある導入でも誰が、何を発見したというのはわかります。ただし、生徒にはピンと来づらいでしょうし、世界観を掴ませるには少々心許ないですね。
教科書に載っている内容は科学者たちがそれまでに研究してきた成果に他なりませんが全てではありません。
なので、教科書に載るほどのセンセーションに行きついた経緯、ドラマを伝えてあげると生徒が引き込まれます。
 
細胞の単元を例にとります。
まず細胞は光学顕微鏡を使わないと見る事が出来ないほど小さいものです。生徒たちは高校までに何度か光学顕微鏡を使ったことがある人が殆どでしょう。生物学にとって顕微鏡は欠かせないものです。
しかし、顕微鏡を発明した人物は何故、生物を拡大して観察しようとしたのでしょうか?
 
と言った具合ですね。誰が細胞を発見したかは教科書を読むとわかるのですが、細胞という概念が無かった時代により小さい世界を見ようとした人物がいて、その人物らによって細胞が発見されたというドラマがそこにあったことは教科書には載っていません。
逆に言うと、教科書に載っている事には必ず行間に隠された歴史的背景が存在するということを生徒にも教えてあげましょう。
白衣

ヴィジュアルイメージを持たせる

生物の場合、世界観を掴むことと同じくらい重要なのが視覚的なイメージです。

頭のなかで固まったイメージを再現できるということですね。生物だと特に遺伝子や体内反応の単元はこれを意識するといいでしょう。

静的にではなく動的に

教科書やそれに準拠した教材も図解が豊富なものが多いです。

視覚的なイメージは教材を作る際にもかなりイメージされていることなんですね。

生物の場合は話のステージが生き物の体内、生き物同士のやりとりといったことなのですが、それらは常に動いている、流動的であるということから、図を用いたからといって必ずしも解り易いとは限らないのです。

少なくとも既出の図に少し、講師が捕捉を加えて動的に捉えてもらうようにすると良いと思います。

どのように動いているのか

生物の動的反応をイメージさせるとき、静止画だと動きの様子は捉えにくいですね。

例えばDNAの複製だと、複製起点から2本差が解けて鋳方3'→5'の方向に新しい鎖が伸長するのがリーディング鎖で5'→3'に伸長するのがラギング鎖で…ラギング鎖の場合、ポリメラーゼの反応方向と逆に鎖が生成されるので短い区画ごとにプライマーが付加されて岡崎フラグメントが…

という感じで口で説明すると何のこっちゃわからんですね(笑)

指導する側も図が無いとしんどいところ。図を用いて説明するときもこの場合はかなり複雑です。

複製という現象においては複製起点、リーディング鎖、ラギング鎖、DNAポリメラーゼ、RNAプライマーといった複数の物質が同時に動いているからです。

これらがどのような方向性を持ってどう動くか、というところを丁寧に説明しましょう。これは複製の話だけではなく生体反応の説明では意識したいところです。

遺伝子複製の様子

コラム

この記事で特に強調したのが

①世界観

②視覚的イメージ

この二つでした。

塾や家庭教師の現場で生徒に指導する時に意識して頂けると生徒にとっても解り易い授業になるのではないでしょうか。

生物に限らずサイエンスの世界は教科書に載っていることだけ説明しても、いざ試験で回答するとなるとこれまで得てきた知識を論理的に繋げて解答をつくらなければならない場面が多く出てきます。だからこそ、暗記だけでは太刀打ちできないんですね。

教科書に載っていることが最低限必要な知識であることは間違いないですが、その発見に至るまでに科学者たちがどのような研究をしてきたかを言及するとはっきりとした世界観を持たせられますし、知識として定着しやすいです。

生徒に勧めること

これは勉強法、というわけではありませんが世界観をもたせるということと繫がりが強いのでご紹介します。

特に、理系大学への進学を希望する生徒さん向けのものです。

試験で問われるのは殆どが教科書に載っているレベルのことですから、最終的には教科書の内容がどれほど頭に入っているかということも重要だと前述いたしました。

実際には、教科書だけを勉強しても教科書の内容をちゃんと理解するには少し足りない。そこを捕捉するのが行間にある背景であり、視覚的イメージです。

それらを通して生徒に生物が面白いと思ってもらうことが大切ですね。

これは早ければ早い程いいのでできれば、高校1年生や高校2年生のうちに教科書以外の読み物を読んでもらうことをお勧めします。

お勧めの書籍を後述いたしますが、これは教科書に準拠しているものでもないし、試験と直接かかわるわではありません。前述した、生徒に生物への関心をもってもらうということを強く意識したものです。

他教科の勉強とのバランスや入試対策の時期を考えると一番効果的なのが高校1年生~2年生の間ですね。

なので、選ぶ本も読み物として面白い事は絶対条件です。

推薦図書
生物と無生物のあいだ 福岡伸一 著(講談社現代新書
カラー図解アメリカ版大学生物学の教科書シリーズ(ブルーバックス)

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