【社会科講師対象】”裁判所”の概要と仕組みをわかりやすく説明する方法①~刑事裁判と民事裁判~

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  • 2015年12月20日公開
キーワード
中学 社会 公民分野 裁判所 しくみ 説明

裁判所って何をするところ?

塾講師のみなさん、こんにちは。

本記事にアクセスいただきありがとうございます。

本稿ではこれから中学生を対象とした”裁判所”の意義や役割について指導法をご紹介していきます。

 

筆者はこれまで中学生・高校生を対象に主に社会科・日本史を中心に執筆してきました。

中学校で扱う公民分野を指導していると常々思うのですが、「憲法」「内閣総理大臣」「政党」などの用語は、日ごろのニュースで耳に入っているのか。

初めて名前を聞くという子はほとんどいません。

 

小学校でも学んだことがあるというのも影響しているかもしれませんが、本稿で扱う”裁判所”についても

 

・人と人とのトラブルを解決する場所
・弁護士は、困った人を助けるかっこいい職業だ
・一番最後の砦は「最高裁判所」というところ

 

などなど、授業の冒頭で発問をしてみると生徒たちは大まかな知識を持っていることがわかります。

ですが、

①裁判所はどうして必要なものなのか?

②裁判所ではどのように裁判が行われているのか?

ということまでは、授業の時数の関係もあってなかなか踏み込めません。

 

本稿では、そんな問題意識から、①②で述べたような

”裁判所”の本質的意義や役割を生徒がしっかり理解できる

 

ような指導法をご紹介します。

 

そもそも裁判とは何だろう?

それでは、裁判所の意義、役割について考えるためにまずは「裁判」というものが、どういうものなのかについて考えていきましょう。

様々な手法があると思うのですが、やはり生徒に身近な題材をケーススタディとして持ってくると生徒は関心を示しやすくなります。

例えば以下のような図を用いて、生徒にケースを具体的に考えてもらってはいかがでしょうか。

 

 最新

 

絵を見ていただくとわかる通り、黄色い家に住んでいるお母さんが隣の赤い屋根の家から聞こえる音にとても迷惑している様子がわかりますね。

 

昼間から大音量で音を流されて迷惑しているだけでなく、夜になってもそれをやめないから、赤ちゃんが寝付けなくてご立腹です。

 

このケースのように私たちは家族や親しい人だけでなく、様々な他人と同じ地域で共同生活をしています。
当然一人ひとり価値観は異なるわけですから、それぞれの人が信じる正義というものも人の数だけあるのです。

 

このケースでも、音を大音量で流す赤い屋根の人は、もしかしたら自分のしていることが悪いことだと思ってないかもしれませんよね。

 

そうなるととても厄介です。この怒っているお母さんが、「音の音量を下げてください」とお願いしてもきいてくれないかもしれません。

 

このように、当人同士で解決ができない争い事(犯罪も含む)が起こった時に、

 

  • (1)その内容をいろいろな視点から調べ
  • (2)どちらが正しいのかを第3者の目線で客観的に判断し
  • (3)最善の解決方法を示す

 

のが裁判であり、裁判所の務めなのです。

裁判所の権力

こうした(1)~(3)までを行うような権力を司法権と呼びます。

この司法権の根拠は、日本国憲法の第76条に明確に規定されているのです。該当項目を確認しておきましょう。

第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
 
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。 

3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
                              引用元:『日本国憲法』

条文を読んでみると、司法権を持っているのは国の中でも唯一裁判所のみであることが読み取れますね。
さらに、同32条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」と規定されています。

法を侵した人が、冤罪(無罪なのに捕まること)などで捕まってはないか、そして不当な刑を要求されるようなことがないように客観的な視点で裁判を受ける権利があることを保障しているのです。

ここまで紹介したうえで、裁判所の2つの種類(刑事裁判・民事裁判)について説明していきます。

 

 

刑事裁判

まず、「刑事裁判」から見ていきましょう。
結論から述べると「刑事裁判」とは、犯罪を扱う裁判のことです。

殺人・強盗や窃盗などの事件が起こったケースを考えてみましょう。
このような犯罪・事件が起こった際に最初に動くのは、警察です。

警察

 

刑事ドラマなどで見たことがある生徒も多いかもしれませんが、警察は事件現場に残っているあらゆる情報(指紋・血痕・髪の毛etc.)をもとに、捜査に力を入れます。

 

そして被疑者(犯人と思われる人物、メディアでは容疑者)が見つかってから、警察は裁判所に逮捕状の請求をします。それはなぜか。
警察はこの逮捕状がなければ逮捕することはできなくなっているからなのです。(現行犯は除く)

 

さて、ここで一度立ち止まってみましょう。
なぜ、犯人を逮捕するためにわざわざ裁判所からの令状が必要になると思いますか?

書類

ここは裁判についての勉強でのキモとなる部分なので、生徒に考えさせてみるポイントと言えるでしょう。

 

これを考えるために、警察が逮捕する権利を持っている場合を考えてみてください。
例えば、ある警察が「まだ捜査は途中だけれど、捜査も時間がかかっているし、Aという人物がなんとなく怪しいからもう逮捕してしまえ」と思ったときをイメージしてみましょう。

 

証拠不十分かつアリバイも成立しており、Aさんは事実無罪だったのに、警察官の一独断と偏見で逮捕をしてしまった・・・。

もちろん架空の例ですが、警察に逮捕する権利を与えていると、こうした不当な逮捕も起こってしまう可能性がありますよね。

最悪の場合「あの政治家を引きずりおろしたいから、賄賂の疑いをかけて逮捕してしまおう」なんてことにもなりかねません。

 

つまり、「本当に逮捕して良い状況になっているのかどうか」をきちんと中立かつ公平に見る機関がなければ、警察の権力が強大になってしまう可能性がでてくるのです。

 

裁判所はこうしたことが起こらないように、警察がこの例のように不当な逮捕をしようとしていないか監視する役割も担っているのです。

 

それでは、この刑事裁判はいったいどのように機能するのか?流れを確認しておきましょう。

(1)犯罪事件発生
→窃盗、強盗、殺人事件などが発生。警察が捜索に乗り出す。
(2)逮捕後の動き
→証拠をつかみ、警察が犯人を逮捕したら検察庁に身柄送検(容疑者を引き渡すこと)
(3)検察官の訴え
→検察官は、容疑者の行動を今一度法律に違反しているかどうか調べ、法を侵していると確証を得たら裁判所に訴えを起こすことになっている。
(4)裁判の開始
→訴え出た検察官が原告、訴えられた容疑者は被告として、裁判が始まる※。
なお、このとき被告人には弁護人(弁護士とも)がつく。裁判官は裁判においてそれぞれの言い分を見定め、被告人の有罪、無罪の判決を下す。※原告:訴えた人 被告:訴えられた人

となります。


テレビドラマなどの影響もあって、弁護士がどういう職業か知っている生徒は多いでしょう。

 

一方、意外と生徒に知られていないのが検察官の仕事です。その役割の違いもしっかり説明できるように指導しましょう。

 

検察官とは、この刑事裁判の流れで出てくるように、裁判において被告人の有罪を確定させることが仕事です。裁判の大前提として、被告人は「有罪が確定するまで」は無罪だからです。

 

有罪であることは立証しなければならないのに対し、無罪であることを立証する必要はありません。
つまり、有罪とする立証を阻止すれば、消去法的に無罪となるわけです。

 

であるからこそ、検察官は犯罪を侵した人にきちんと裁きを受けさせるために有罪であることを立証しなければならないのです。

 

それに対して弁護士は、検察官の主張する根拠の矛盾点や証拠の不十分さなどを指摘するのが仕事です。
裁判でも、検察官の主張する証拠や状況に少しでも矛盾点がないかどうかを見ています。

有罪かどうか疑わしい容疑者であればあるほど、有罪を主張する検察官とのやりとりは激しいものになります。

 

 

民事裁判

さて、それでは次に民事裁判を見ていきましょう。

 

刑事裁判の取り扱いが犯罪を扱うものであったのに対し、民事裁判は最初のケーススタディで考えたような騒音問題、金銭トラブル、離婚問題、遺産相続など当人同士では解決できない問題を取り扱う裁判です。

 

当人同士、というのには個人だけでなく企業や行政機関も含まれます。
具体的な例としては、1960年代に公害問題が起こった際には、被害者の家族がチッソを取り扱っていた会社と裁判をしていますし、薬害エイズの患者やハンセン病患者が国を訴えた裁判などもニュースで盛んに報道されていたことがありましたよね。(ちなみに、国や地方公共団体への訴訟は「行政訴訟」と呼びます。)

 

簡単に概要を説明します。再掲になりますが、民事裁判のケーススタディになるので、冒頭の絵をもう一度考えてみましょう。

騒音トラブル

 

以下、具体的な裁判の流れです。



(1)訴状提出
→訴える人(この場合で言えば黄色い家の女性)が、騒音を鳴らし続ける赤い屋根の家に住む人への訴えを記した訴状を裁判所に提出※
    ※原告:訴えた人 被告:訴えられた人
(2)訴状審査
→裁判所は訴状を審査し、口頭弁論を行う(口頭弁論:法廷で原告、被告の言い分を聞くこと)
(3)証人尋問
→証人に事件現場のことを詳しく説明してもらい、証拠をもらうこと。このケースで言えば、近隣住民の人などが証人として、赤い屋根の家が実際に騒音が夜中もなり続いているかなどの説明を求められる可能性がある。そうした証人尋問に加え、証拠調べなどの段階も経て、最終的に判決へ

 

という順番になります。

 

民事裁判は先述した刑事裁判のように、検察官は登場しません。この絵のケースのように、訴えた人が原告となり、訴えられた人が被告となるからです。

 

ただし、原告、被告にはそれぞれ原告代理人、被告代理人という形で弁護士がつくケースが一般的です。
法廷で争う以上、どうしても法律の専門的な知識が必要になるので、原告、被告ともに弁護士を雇うことが多いからです。

 

珍しいケースとして原告も被告も代理人の弁護士をつけない、ということも起こりえます。
原告、被告それぞれの選択次第、というわけですね。

まとめ~裁判所の役割と裁判の種類をおさえよう~

本稿では、ここまで


①裁判所はどうして必要なものなのか?
②裁判所ではどのように裁判が行われているのか?

ということについて、2種類の裁判とその具体的な流れをご紹介してきました。

 

指導のポイントをまとめると

テーマ:裁判所はどうして必要でどう行われているのか?
○裁判とは何か
(1)ある一つの事例から
(2)トラブルとトラブルをどう解決するか
(3)裁判所の3つの意義
○裁判所の根拠
(!)日本国憲法第76条
(2)2つの裁判所
○刑事裁判
(1)刑事裁判とは
(2)逮捕に必要なものと裁判所との関係
(3)刑事裁判の流れ
○民事裁判
(1)民事裁判とは
(2)どのような流れか
(3)刑事裁判との違い

となります。

裁判所の扱いは非常に奥が深く、違憲立法審査権や裁判の種類などまだまだ説明すべきポイントがありますが、その点についてはシリーズの中で紹介したいと思います。

本稿は以上です。ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

記事執筆者:スペンサー

<経歴>
大手塾講師歴2年半。集団指導、個別指導をともに経験し教育実習のため退塾。
大学卒業後すぐに、教員になることを志していたが、専門分野である歴史学の研究が楽しく大学院に進学することを決定。現在は大学院2年生。日本近現代史を専門フィールドにして日々研究と奮闘中。
<記事執筆>
日本史の指導法を中心に、大学生活や就職活動の応援もできるような記事を配信できるよう執筆していきたいと思います。

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