小学校教師の年収はいくら?公的統計に無い数字の目安と全科担任の負担を解説
「小学校教師の平均年収」を調べても、見つかるのは近い区分の数字だけです。
総務省の統計は、小学校と中学校を「小・中学校教育職」としてまとめて集計しています。小学校教員だけの平均給与は公表されていません。
目安になるのは、この区分の平均給与月額411,965円です。12倍した年収換算は約494万円で、賞与は含みません。
この記事では、小学校だけの数字が無い理由と、目安の数字の使い方を解説します。あわせて、年収の数字には表れない「全科担任」の負担も取り上げます。
【この記事のまとめ】
- 小学校教員だけの平均給与は、総務省の統計に無い
- 目安は「小・中学校教育職」全体の平均給与月額411,965円(中学校・幼稚園の教員を含む)
- 小学校教諭が平日に授業(主担当)へ使う時間は、中学校より57分長い(部活動は逆に短い)
- 全科担任のため授業の比重が高く、1日の中で空きコマが少ない
目次
■1. なぜ「小学校だけ」の年収の数字が無いのか
■2. 小学校教員の年収の目安になる数字
■3. 全科担任という構造的な負担
■4. 自分の年収と待遇を確認する方法
■まとめ:金額と負担の2つの軸で整理する
■相談窓口
1. なぜ「小学校だけ」の年収の数字が無いのか
総務省の区分に小学校単独は無い
総務省の令和6年地方公務員給与実態調査は、教育職を「小・中学校教育職」「高等学校教育職」などの区分で集計しています。小学校だけを切り出した区分はありません。
「小・中学校教育職」には、中学校の教員に加えて幼稚園の教員も含まれます。経験年数別の内訳も、この区分のまま集計されています。初任給の一覧表でも、都道府県ごとの欄は「小・中学校教諭」の1本だけです。
小学校だけを集計しない理由を、総務省は公表していません。義務教育の9年間を1つのまとまりとして扱っているためと推測されます。いずれにしても、小学校教員が自分の校種だけの平均値を知る手段は、公的統計にはありません。
では、小学校教員の待遇は何を目安にすればよいのでしょうか。
2. 小学校教員の年収の目安になる数字
区分全体の平均給与月額は411,965円
「小・中学校教育職」全体の平均給与月額は411,965円です(令和6年4月1日現在)。12倍すると約494万円で、この金額に賞与(期末手当・勤勉手当)は含まれません。
・出典:総務省「令和6年地方公務員給与実態調査結果等の概要」第9表より
ただし、この数字には中学校と幼稚園の教員が含まれています。小学校教員だけの実額は、区分平均とは別に確認が必要です。確認の方法は4章で紹介します。
3. 全科担任という構造的な負担
小学校は1人の担任がほぼ全教科を教える
小学校では、1人の担任が国語・算数・理科・社会などほぼ全教科を教える「全科担任制」が基本です。文部科学省も、小学校の教育はこれまで学級担任制を中心に行われてきたとしています。
中学校以降は、教科ごとに担当が分かれる「教科担任制」が中心です。1人が受け持つ準備の範囲が、そもそも違います。
文部科学省は外国語・理科・算数・体育を優先して専科指導の対象とし、教科担任制を計画的に広げています。専科の教員が入る教科では、学級担任の準備が一部軽くなるしくみです。
在校時間は中学校とほぼ同じ
小学校教諭の平日1日あたりの在校等時間は10時間45分です。中学校教諭の11時間1分と比べると、平日はほぼ同じ水準です。土日は0時間36分と短く、業務は平日に集中しています。

・出典:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」より
ただし、週60時間以上勤務している教諭の割合は、小学校が14.2%で、中学校の36.5%を大きく下回ります。中学校の勤務時間と部活動の負担は、中学教師の年収を解説した記事にまとめています。
違いは時間の長さより準備の幅に出る
差がはっきり出るのは、業務の内訳です。小学校教諭が平日に「授業(主担当)」へ使う時間は4時間13分で、中学校の3時間16分より57分長くなっています。

・出典:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」より
一方、部活動・クラブ活動は1日3分で、中学校の37分よりずっと短い時間です。
全科担任の小学校教諭は、1日のうち授業が占める割合が高く、空きコマはわずかです。授業以外の業務に回せる時間も限られます。
準備の範囲も広くなります。中学校の教科担任なら担当教科の授業と教材研究に集中できますが、小学校の担任はそうはいきません。国語の教材研究の次に算数の教え方を考え、理科の実験も準備する、という毎日です。
たとえば、中学校の数学の教員が1時間の授業のために30分準備するとします。小学校の担任は、算数・国語・理科のそれぞれに別の準備が必要です。授業の時間が同じでも、その裏で必要になる準備の量は同じではありません。
複数の教科の教材研究を並行するため、頭の切り替えも頻繁です。この負担は、在校時間の統計には表れません。
転職を考えるなら、「毎日いくつの教科を準備しているか」という働き方の面からも待遇を見直してみてください。教員の働き方を時間・健康・制度の数字で整理した教員はブラックなのかを解説した記事もあります。
4. 自分の年収と待遇を確認する方法
源泉徴収票で実額を確認する
自分の実際の年収を知るには、区分全体の平均ではなく、源泉徴収票の「支払金額」を見るのが確実です。平均値はあくまで目安で、実額は勤続年数や自治体によって変わります。
源泉徴収票の金額は、教職調整額(残業代の代わりに一律で上乗せされる手当)を含んだ額です。給料と手当の仕組みは、教員の給料の仕組みを解説した記事で確認できます。
経験年数が近い階層と比べる
平均の中での自分の位置を知りたいときは、経験年数別の数字と比べます。
総務省の同じ調査は、経験年数の階層ごとに平均給料月額(諸手当を含まない基本給)もまとめています。「小・中学校教育職」では、経験1年未満が235,445円、10年以上15年未満が339,554円です。30年以上35年未満では429,699円になります。

・出典:総務省「令和6年地方公務員給与実態調査 第6表」より
経験35年以上になると、376,156円に下がります。定年後の再任用などで、短時間勤務の教員が含まれるためと推測されます。
自分の経験年数に近い階層の数字と、源泉徴収票の金額を並べてみてください。
中学校教員も同じ区分の数字を使いますが、負担の中心は部活動や土日の業務で、小学校とは種類が違います。教員全体の平均年収や民間との差は、教員の年収を解説した記事で詳しく紹介しています。
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まとめ:金額と負担の2つの軸で整理する
小学校教員の年収を考えるときは、次の2つを分けて整理します。
- 金額:区分全体の平均給与月額411,965円(年収換算で約494万円・賞与を除く)が目安です。自分の実額は源泉徴収票で、平均の中での位置は経験年数別の数字で確認できます
- 負担の性質:全科担任のため授業の比重が高く、空きコマが少ない構造です。準備する教科の幅も広くなります
どちらに不満があるかで、次の一手は変わります。金額が不満なら教育職全体や他の職種との比較、負担が不満なら働き方そのものの見直しが選択肢です。仕事を続けるか迷っているなら、教員をやめたいと思ったときの整理のしかたも参考になります。
他業種への転職の選択肢は教員から他業種へ転職する場合、塾業界の待遇は塾講師の年収の内訳で解説しています。
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参考文献
・総務省「令和6年地方公務員給与実態調査結果等の概要」第9表より
・総務省「令和6年地方公務員給与実態調査」第6表・初任給より
・文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」より
・文部科学省「小学校高学年における教科担任制に関する事例集(令和5年3月)」より
・義務教育9年間を見通した指導体制の在り方等に関する検討会議「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について(報告)(令和3年7月)」より
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